老後資金「個人年金」

40~50代の大人の方は、そろそろ老後の生活資金について考える頃だと思います。そして、実際、何人もの方が私に「あなたのところでは個人年金は取り扱っていないのですか?」と尋ねられました。

私は、早いうちから老後の資金計画をされるのは、とても良いことだと思います。余裕のある老後を送るための自助努力は大切です。でも、なぜ多くの方が「まず、個人年金で。」と思われるのでしょうか。私がその理由を尋ねてみると「今の銀行の預金に比べて金利が良いと思うから。」とか「最近の(日本の)株高で、変額年金では運用益が期待できるから。」とお答えになりました。

そうですね。個人年金には、私が思いつくだけでも主なものとして「確定個人年金」「変額個人年金」「外貨建て個人年金」などがあります。それぞれ商品性に特徴がありますが、基本的に私はこれから老後資金を準備される方には「個人年金」での運用をお勧めしていません。

なぜなら、私は、保障と運用は分けた方が分かりやすく、コスト的にも優位性があると思うからです。

まず、①「確定個人年金」は、契約時の金利によって予定利率(運用利回り)が決まるので現在の超低金利の時期の加入は不利になります。現在、予定利率(運用利回り)は1%未満の商品が主流です。なお、予定利率とは契約者が払う生命保険料から事業経費を差し引いた後の死亡給付金や年金の支払いに充てる「責任準備金」の運用利回りのことで、払った生命保険料全てが運用にまわる訳ではありません。また、近年、「返戻率(戻り率)」という指標がよく使われています。そこで、返戻率(戻り率)と実質運用利回りの違いを理解することが大切です。返戻率(戻り率)とは、「年金受取総額÷支払保険料×100」のことです。例えば返戻率(戻り率)105%であれば保険料払込期間(月払)20年、据置期間・なし、受取期間(毎月受取)10年の商品なら実質運用利回りは概算で0.3%程度にすぎません(モーニングスター金融電卓で試算)。その間、長期間、資金を固定することになり、インフレリスクもあります。でも、「保険の予定利率は低いが保険料控除で税金が安くなるから、利回りが良くなるのでは。」とおっしゃる方もいらっしゃいますね。個人年金保険料控除は、所定の要件を満たして個人年金保険料税制適格特約をつけた上で所得税の控除は最大で年4万円。住民税の控除は最大年2万8,000円です。利回りアップを期待するほどの節税効果はないです。

続いて、②「変額個人年金」では、払い込んだ保険料の運用成果によって、将来受け取る年金額や解約返戻金が変動(増減)するタイプの生命保険商品です。これは、投資信託と生命保険を組み合わせた商品です。一般には複数の特別勘定が用意されていて自由にスイッチングできるタイプのものが主流です。インフレに対応できる可能性はありますが、運用にはリスクが伴います。限られた運用先の中での選択なので高い運用益を長期にわたり確保するのは難しいです。また、保険という性格から保険に回る部分があり、加入、運用、解約などのコストも一般的に投資信託より高いです。早期解約での解約控除(一種のペナルティー)もあります。そうであれば変額個人年金保険には(一般)生命保険料控除など税制上の優遇措置もありますが、私は余裕資金で投資信託を購入する方が良いです。NISA(ニーサ)(=少額投資非課税制度)を活用した積立型(毎月自動的に一定額を継続して投資するタイプ)の投資信託も可能です。ただし、こちらも運用はあくまで自己責任です。十分な知識と経験が必要で性格的な向き不向きもあります。積立投資(毎月自動的に一定額を継続して投資)はドル・コスト平均法でリスクは軽減されるとのことですが、一般的に高齢者はリスク許容度が低いので注意してください。

最後に③「外貨建て個人年金」には、「カントリーリスク」と「為替リスク」があります。「カントリーリスク」は米・豪・ユーロであればほとんど問題はないと思いますが、ただ、米・豪・ユーロとも日本より利回りは少し高いですが、「為替リスク」は日本円で受け取る方にとっては大きな影響を受けるので、決まった年金を確実に準備したい方には向きません。また、保険という性格から保険に回る部分があり、加入、保有中に発生するコストもあります。円-外貨交換コストや契約の維持管理料、年金の管理料、途中解約での解約控除などさまざまなコストが発生します。

当事務所では、いわゆる貯蓄性保険では死亡保険金200~500万円であればお手頃な保険料で一生涯の死亡保障または老後の一時金が準備できる「無配当 低解約返戻金型終身保険」をお勧めしています。ただし、保険料払込期間中の解約返戻金は支払保険料より少なくなります(「無配当 終身保険」の解約返戻金の7割に抑制)。商品の性格上、流動性に劣るので注意してください。

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